ケース:製造業

整理解雇について泥沼化!――経営状態が悪化したので整理解雇等を行った会社が,人員削減の必要性も,解雇回避努力も,手続きの妥当性もないなどとして,裁判で解雇無効,賃金支払いを命じられたケース

事例詳細

Y社は,金属製品の設計,製作,販売等を目的とする株式会社です。

Y社の就業規則には,会社は,業務の都合により人事異動を行うこと,やむを得ない事業場の都合によるときに解雇できることが定められていました。

Xは,Y社に正社員として入社し,Y社のA営業所で勤務し,賃金は,基本給17万円に諸手当を加え月額22万円程度でした。

Y社は,経営状態が悪化したため,A営業所の人員削減を行い,Xの同僚Cは,A営業所はいずれC1人とし,Xは退職となる,などと記載した提案書を,Xの了解を得てY社に提出し,Xの処遇が宙に浮いた状態になった状況で,Xが出勤しようとしたので,Y社はXに自宅待機を命じました。

そこで,Xは,Y社を被告として,雇用契約上の地位確認と賃金の支払いを求め提訴しました。

Y社は,念のため,やむを得ない事業上の都合があるとしてXを解雇しました。

ちなみに,Xは,経理としてA営業所の慢性的な赤字の実情を熟知していましたが,転勤命令を出しても応じない可能性が高い状況でした。

訴訟の争点は,

①Xの了解を得た提案書の提出がXの退職の意思表示といえるか,
②解雇が有効か,

の2点でした。

判決は,まず,①(退職の意思表示といえるか)については,提案書の了承では,退職という生活に重大な影響を及ぼす事項に係る意思表示をしたとはいえない,としました。

また,②(解雇が有効か)についても,A営業所長がXに転勤を現実的に打診し,それが受けられない場合は解雇もありうると説明していないこと,宙に浮いたXの処遇をはっきりさせなかったことなどから,解雇の回避に向けた努力やそのための妥当な手続きを欠いており,また,全社的には人員削減の必要性もなかったなどとして,Y社に対し,Xに月額22万円の賃金支払いを命じました。

Y社としては,経営状態が悪化して,合理化などによる経営の立て直しが必要となったため,A営業所の慢性的な赤字を熟知するものの,転勤命令を出しても断るのが目に見えていたXをやむをえず解雇したにもかかわらず,解雇が無効とされ,賃金支払いを命じられ,そのショックは計り知れません・・