従業員が過労死した場合,企業に安全配慮義務違反又は注意義務違反があり,これらの義務違反と労働者に生じた損害との間に因果関係が認められると,企業に慰謝料支払義務が生じます。

過労死による慰謝料は高額

過労死は,死亡という重大な結果が生じているため,賠償金の額は当然高額となります。

裁判例を見ると,大体2000万円~3000万円となるものが多いようですが,当然それぞれの事案によって金額は異なります。

例えば,長時間労働に従事する労働者がうつ病に罹患して自殺した事案においては,企業側が賠償金として1億6800万円(遅延損害金も含む)を支払うという内容で和解が成立しました(平成12年3月24日,電通事件差戻控訴審)。

このように,事案によって,企業は高額な慰謝料支払義務を負うこともあります。

慰謝料算定の考慮要素

では,具体的な慰謝料を算定するにあたり,裁判所はどのような点に着目するのでしょうか。

裁判例をみると,慰謝料額算定において,次の要素が考慮されています。

(1) 死亡に至るまでの勤務状況(労働時間,職務内容など)

例えば,システムエンジニアとして勤務していた労働者が心臓性突然死により死亡した事案において,裁判所は,労働者が時間外労働時間が月に100時間を大きく上回るものであったことや,右労働者の業務が日常的に精神的緊張を伴うものであったことなどを考慮して,慰謝料2500万円を認容しました(福岡地判平成24年10月11日)。

(2) 労働者の生活態度(喫煙量など)

例えば,労働者が急性心筋虚血で死亡した事案において,裁判所は,右労働者が約30年間,1日に約25本のたばこを吸っていたことなどを考慮して,請求額3000万円に対し,慰謝料を540万円を認容しました(札幌高判平成21年1月30日)。

(3) 将来を嘱望される能力を有していたか

(4) 労働者の年齢

(5) 労働者の家族関係(子の有無,年齢など)

建設会社で就労していた労働者が急性心不全により死亡した事案について,裁判所は,右労働者に3人の子があり,うち2人は右労働者の死亡当時に胎児であったことなどを考慮し,慰謝料2800万円を認容しました(広島高判平成21年6月5日)。

労務に強い弁護士に相談を

このように,従業員の過労死による企業の賠償額はかなり高額であり,その支払により経営の存続すら危ぶまれるおそれがあります。

また,従業員の過労死により,社会からブラック企業というレッテルを貼られてしまうおそれもあります。

これらを回避するためには,従業員の労務管理を徹底することが重要です。

「うちの会社は大丈夫?」と不安に思った方は,念のため,労務に強い弁護士に相談しておくと安心です。