企業を運営していくにあたっては、必要に応じて労働者の解雇に迫られることがあります。

両者の合意で円満に解決できればいいのですが、トラブルに発展してしまうことも珍しくありません。

このようなときに円満解決を図る制度として注目されているのが「不当解雇の金銭解決制度」です。

どのような制度なのか詳しくみていきましょう。

不当解雇の金銭解決制度とはどのような制度か?

企業側からみれば労働者の態度に問題があるため解雇した場合であっても、証拠の提出状況などによっては不当解雇と判断されることがあります。

このとき労働者には元の職場への復帰の選択肢がありますが、訴訟にまで発展した企業とその労働者の関係は冷え切っており、再び信頼関係を構築することは極めて困難でしょう。

このため、現時点においても多くの事例で和解による金銭解決が図られています(独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査によれば96%で金銭解決が図られています)。

そして現在、導入が検討されているのが「不当解雇の金銭解決制度」です。

この制度は裁判において不当解雇だと判断された場合に復職という選択肢ではなく金銭的な埋め合わせで解決を図ろうとする制度です。

この制度が対象とするのは「労働者からの申し立てがあった場合」のみですが、経済的な不安から復職を希望している労働者には別の道を歩き出す大きな後押しとなるでしょう。

不当解雇の金銭解決制度に関する議論の状況

不当解雇の金銭解決制度は2003年から過去2度導入が議論されている制度ですが、お金さえ払えばどのような状況であっても解雇できるようになるのではないか、とデメリットが危惧されて、2017年6月時点で導入には至っていません。

2017年5月29日、厚生労働省はこの制度の仕組みに関する考え方を取りまとめましたが、この報告書案においても「労働政策審議会における検討を進め、所要の措置を講じることが適当」という表現にとどめられています。

もっとも、制度化することによって手続きなどが明確になり早期解決が期待できるとのメリットがあるため、政府は導入に向けて動いています。

諸外国では既に導入されている?気になる今後の展開

ドイツ、フランス、アメリカではすでに不当解雇の金銭解決制度が導入されています。

たとえばアメリカでは労働者の解雇は原則自由とされている反面、不法行為に該当するような一定の場合には損害賠償の支払いが命じられます。

また、フランスでは従業員か企業側が復職を拒否した場合に裁判所から金銭保証が命じられています。

文化などが異なる諸外国と単純に比較することはできないとしても、労働者にとっても確実に金銭が支払われるというメリットがあるため、今後も議論は深まっていくでしょう。

もっとも制度の濫用を防ぐための手段など、制度の導入にあたってはまだまだ議論しなければならない点がいくつもあるため、導入の見通しとしてはあと数年はかかる可能性があると分析されています。

現時点では裁判となったときには企業側と労働者で今後の解決策について議論しなければなりません。

和解金を支払うとしてもその額はケースバイケースなので、弁護士に相談して適切な解決策のアドバイスをもらった方が良いでしょう。

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