上司のパワハラでうつ病になったと言われた

上司のパワハラでうつ病
  • 上司からパワハラを受けたと言われた
  • パワハラの結果、うつ病になったと診断書を出された
  • 会社に来なくなった

このような相談が増えています。

もちろん、その従業員が本当にパワハラを受けうつ病になったのであれば、会社はその従業員に相応の補償をしなければならないでしょう。

しかし、関係者から事情を聴くと、実際にはちょっとした指導・叱責をしただけで、本人の受け止め方によって、うつ病になったと主張するケースが散見され、多くの会社経営者や管理職の悩みの種になっています。現に、若手会社員の間に、「新型うつ病」が流行っているのです。

ありがちな間違った対応

このようなケースで、会社側は、自身のやり方に間違いはないと考え、つい従業員に対し欠勤控除や戒告など、厳しく臨んでしまいがちです。しかし、そのような対応は間違いです。

仮に従業員側に問題があるケースでも、自分が正しいと考えている従業員に厳しい処分で臨むのは、かえって従業員側の反発を招き、賠償請求や労災申請など事態をこじらせるおそれがあります。

まして、従業員がうつ病との医師の診断書を提出している場合は、従業員を叱責するなどして追い詰めると、最悪、従業員を自殺させてしまうかもしれません(うつ病患者の自殺率が15~25%と極めて高いです。)。

そうなると、民事上の多額の賠償責任を問われ、そこに労基法違反があれば刑事罰を受けることすらあります。

実際、平成3年に発生した電通の過労死(過労自殺)のケースでは、会社に総額1億6800万円もの高額な賠償等の責任が認定されています(最高裁平成12年3月24日判決)。

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正しい対応

早目に労務に詳しい顧問弁護士に相談することです。

当初はそれほど大事ではないと思われても、会社だけで対応するのは危険です。というのも、当初は大事でないと考えていた労務問題が、後日こじれて火を噴き、当事務所に相談に来られる経営者、管理職の方が多いからです。

そして、顧問弁護士の助言に基づき、まずは会社自身が、その従業員がそのような主張をするようになった経緯や事実関係を確認することです。

すなわち、出退勤状況、業務内容、業務量、上司の指導状況などを客観的な資料から把握するのです。残業時間を過少申告させている職場の場合は、タイムカードだけではなく、ビルの出入りやドメインへのログイン状況を確認する必要があります。

また、その従業員や上司の言い分を聴き取ることも大切です。

ここで大切なのは、弁護士に聴き取りさせないことです。
というのも、弁護士が介入したと従業員側が知ると、従業員によってはそれだけで反発しますし、従業員が身構えて聴き取りに協力してくれなくなったり、いきなり労働者側に立つ弁護士を付けてきたりするなど、早期解決が遠のくおそれがあるからです。

事実関係の調査の結果、会社に非があると考えられる場合は、顧問弁護士の助言を参考に、補償等の対応を行います。

では、調査の結果、会社に非がない場合は、その従業員と争うべきでしょうか?
そのような場合であっても、労務に強い顧問弁護士に相談しながら、争うことによるリスクと天秤にかけ、対応を決めるのが賢いやり方です。

いずれにせよ、いざというときに何でも相談できる、労務に強い顧問弁護士がいると重宝します。

パワハラ問題への対応を機に労働トラブル予防を

従業員のクレームに対応できたとしても、そのような従業員がいるということは、将来同様のクレームが発生するおそれがあるということです。

そこで、そうした実際のクレームを機に、将来のクレームを防ぐため、就業規則をはじめとする労務管理の見直しを行うとともに、それでも防ぎきれない将来のクレームに備え、顧問弁護士がいない場合は、早期に労務に強い顧問弁護士を付けることをお勧めします。

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
開所以来、姫路エリアに密着。使用者側労働問題に注力。経営法曹会議会員。

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