X食品株式会社は,従業員50人の地元名産の食品を製造・販売する会社で,近時,先代社長が亡くなり,先代社長の長男Aが社長を継ぎました。

ところが,新社長Aが先代の家族経営的な経営方針を改め,人事や給与,業務分担について新制度を導入しようとする都度,先代社長の番頭格として活躍した事業部長Yが反対意見を述べるので,Aさんは,最初のうちは,X社に長年勤めX社をよく知るYの言うことだからと意見を汲んでいましたが,あからさまに反対意見を述べるYが次第に疎ましくなりました。

そこで,Aさんは,Yが事業部長として行った事業の大きな失敗をきっかけに,Yを退職させたうえ,事業の失敗による損害と退職金を相殺するとして,退職金を支払いませんでした。

すると,Yは,弁護士を付けて,退職金の支払いを求めてきました。

Aさんとしては,YがAさんの方針にことごとく反対したうえ,Yが行った事業の失敗による損失が多額であることから,退職金をできる限り支払わないようにしようとしましたが,Yの弁護士は,労働法をタテに退職金を支払わなければ提訴も辞さないとの構えを崩しませんでした。

X食品株式会社は,先代社長の頃の顧問弁護士が高齢で死亡して以降,顧問弁護士がいませんでしたので,Aさんは,誰かよい弁護士はいないかと,同業者等のつてをたどり,ようやく地元の(労務専門でない)弁護士に事件を依頼しました。

しかし,その弁護士は,近年業績が悪化し退職金支払いが重い負担となるといったX社の事情にほとんどお構いなく,勝ち目がないので退職金を満額支払うように,と述べるばかりでした。

X社は,もはやこれまでと,Yにほぼ満額の退職金を支払うとの和解を余儀なくされました・・

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