労務トラブルは全ての経営社の方が企業の規模に関わらず気をつけなくてはならない問題です。例えば以下の様なケースでのトラブルがありますが、決してこれは対岸の火事ではございません。

これらは労務トラブルに慣れた・経験のある弁護士が適切に対応すれば防げたケースです。しかし、事件が起きて慌てて専門では無い弁護士に依頼をしたり、顧問弁護士はいるが労務に詳しくない弁護士が対応することで、結果的に推しきられてしまっています。

労務問題は「弁護士の経験が非常に重要」だということを知って頂ければ幸いです。

弁護士の対応の不備により、問題となった事例

事例1:反抗的な先代の番頭に煮え湯を飲まされる

X食品株式会社は,従業員50人の地元名産の食品を製造・販売する会社で,近時,先代社長が亡くなり,先代社長の長男Aが社長を継ぎました。

ところが,新社長Aが先代の家族経営的な経営方針を改め,人事や給与,業務分担について新制度を導入しようとする都度,先代社長の番頭格として活躍した事業部長Yが反対意見を述べるので,Aさんは,最初のうちは,X社に長年勤めX社をよく知るYの言うことだからと意見を汲んでいましたが,あからさまに反対意見を述べるYが次第に疎ましくなりました。

そこで,Aさんは,Yが事業部長として行った事業の大きな失敗をきっかけに,Yを退職させたうえ,事業の失敗による損害と退職金を相殺するとして,退職金を支払いませんでした。

すると,Yは,弁護士を付けて,退職金の支払いを求めてきました。

Aさんとしては,YがAさんの方針にことごとく反対したうえ,Yが行った事業の失敗による損失が多額であることから,退職金をできる限り支払わないようにしようとしましたが,Yの弁護士は,労働法をタテに退職金を支払わなければ提訴も辞さないとの構えを崩しませんでした。

X食品株式会社は,先代社長の頃の顧問弁護士が高齢で死亡して以降,顧問弁護士がいませんでしたので,Aさんは,誰かよい弁護士はいないかと,同業者等のつてをたどり,ようやく地元の(労務専門でない)弁護士に事件を依頼しました。

しかし,その弁護士は,近年業績が悪化し退職金支払いが重い負担となるといったX社の事情にほとんどお構いなく,勝ち目がないので退職金を満額支払うように,と述べるばかりでした。

X社は,もはやこれまでと,Yにほぼ満額の退職金を支払うとの和解を余儀なくされました・・

事例2:異動を拒む正社員を安易に解雇した結果、高額の金銭支払いを余儀なくされた

X工業株式会社は,従業員100名程度の自動車部品メーカーです。

女性正社員Yが子育てを理由に何度か異動を拒み,さらに,ことごとく上司に反抗的な態度をとったため,何回か注意した後,Yを解雇してしまいました。

Yは,すぐさま法テラスを利用して弁護士を頼み,従業員としての地位保全の仮処分を申し立てるとともに,解雇無効・地位確認の訴えを提起してきました。

X社としては,Yは正社員であり,労働契約書に勤務地の縛りはなかったことなどを主張し,それにもかかわらず異動を再三拒んだため解雇したものであって,解雇は正当であると主張したいと考えました。

あいにく,X社は,顧問弁護士がいなかったため,取引先が紹介した弁護士に相談したところ,その弁護士はX社の顧問弁護士となることを申し出ましたが,X社は,とりあえずスポットで事件を依頼することにしました。

すると,その弁護士は,顧問先の案件を優先したのか,雇い始めたばかりの新人弁護士にX社の事件を丸投げしため,新人弁護士が裁判所の対応を行うことになりました。

結果,X社の主張もむなしく,審尋を経て間もなく地位保全の仮処分が発令され,Yが会社に出勤していないにもかかわらず,Yが退職に納得するまで賃金を支払うことになり,さらに,本案でも数回目の期日で,X社は,Yに900万円と高額の上乗せ退職金を支払って退職してもらうとの和解をする羽目になりました・・

事例3:経営の苦しい介護施設で倒産の危機

社会福祉法人X会は,地元で介護老人福祉施設Aを運営する社会福祉法人ですが,その施設は交代制勤務であり,とりわけ夜間職員が手薄な状態でしたが,採算を考えるとやむを得ない状況でした。

Aに勤務する介護職員Yは,かねてから,夜間の休憩時間が実際は手待ち時間となっていたことに不満をいだき,自身が属する労働組合の息のかかった弁護士に依頼し,X会を被告として,2年前にさかのぼって未払残業代の支払を求める訴訟を裁判所に提起したので,X会は,顧問弁護士に事件を依頼しました。

裁判では,夜間の休憩時間に仕事を余儀なくされたかどうかが深刻な争点となりましたが,顧問弁護士は,裁判所に型通りの薄い書類を出すばかりで,期日を重ねるごとにX会に不利な状況になり,尋問を経て,X会に対し,未払残業代に遅延損害金,付加金を加算して約150万円を支払えとの敗訴判決が下り,控訴審でも第1審判決が維持されました。

問題は,X会は,同様の勤務状況にあった介護職員が多数いることから,彼らからも同様の訴訟を提起されるおそれがあることです。X会は,もしそのような事態になったら,多額の支払に耐え兼ね倒産するかもしれないと悩んでいます・・

経営者の労務問題に強い弁護士とは

では、経営者の労務問題に強い弁護士はどのような基準で選べば良いのでしょうか。それは、以下の3点だとお考え下さい。

1 経営者の労務問題に関する専門サイトがある

経営者の労務問題に強いのかどうか――それは,各法律事務所の業務を調査しない限り厳密にはわからないでしょう。

ただ,そうした厳密な調査をしなくても,経営者の労務問題に強い弁護士かどうかがわかる簡単な目印があります。

それは,経営者の労務問題に関する専門サイトがあることです。もちろん,経営者の労務問題に関する専門サイトがあれば,絶対にその方面で強いとは限りませんが,自信がなければそうしたサイトを出さないでしょうし,そうしたサイトを見て相談に訪れる企業が多いことが推測されることから,経営者の労務問題に関するノウハウがたまりやすいといえるでしょう。

2 経営者の労務問題に強い他の弁護士と交流している

ある分野に強い弁護士は,自分だけで仕事をしていることは少なく,その分野の他の弁護士と交流し,情報を得ているものです。

ですので,経営者の労務問題に強い弁護士かどうかは,経営者の労務問題に強い他の弁護士と交流があるかどうかが一つの目安となります。

3 社労士など各種専門家と協力している

経営者の労務問題を解決・予防するには,社労士など各種専門家の力を借りた方がよい場合がありますので,経営者の労務問題に強い弁護士は,社労士など各種専門家との協力関係を築いています。