過剰労働や残業代の未払いは社会問題として大きく報道されるようになりました。

そんな中、ヤマト運輸が従業員に対し、過去2年分の未払残業代を支払って話題となっています。

この決定が業界にどのような波紋を呼ぶのか、ここでは解説していきます。

「見なし残業代」という抜け道は正当か

労働基準法では従業員に対し、企業が指定できる労働時間が細かく定められています。

そして、指定の労働時間を超過した労働に対しては残業代を支払う義務があります。

これは正社員、契約社員、アルバイトやパートを問わずに、労働者側にも認められている権利です。

しかし、日本では多くの企業が「見なし残業代」という形で労働者に報酬を支払う傾向が残っています。

見なし残業代では、労働者が一ヶ月に行うであろう残業時間分の報酬をあらかじめ基本給に含んで支払います。

結果、労働者は残業が発生してもその都度経営側に請求をすることがありませんでした。

しかし、多くの見なし残業代は実際の残業代よりも少額しか支払われていないため、労働者の不満は蓄積していきました。

見なし残業代は労働基準法に照らし合わせると不当であるケースも目立ち、労働者が正当な手続きを踏まえて抗議するようになる流れも顕著になりつつあったのです。

ヤマト運輸の決断の余波

ヤマト運輸は一部の従業員に対して、労働基準法で保障されていた休憩時間や残業代を徹底していなかったことが判明しました。

これまでは労働者側が「抗議することで社内の立場を弱くしたくない」との気持ちがあり、表立って抗議できない空気がありましたが、今回は労働基準監督署の調査が入ったことで、経営側の不当性が認められる運びとなりました。

結果、過去2年分の残業代が支払われる決定が下されたのです。

今回の余波としては、まず超過労働を迫られがちな配送業の環境が見直されるきっかけとなりました。

その他の残業が多い業種にもポジティブな効果をもたらすでしょう。

そして、一人当たり数百万円にも及ぶ額の残業代が実際に支払われたことに衝撃が走りました。

ヤマト運輸のような業界トップクラスの大企業で事例が生まれたことで、他の企業も労働体系を再整備する必要が生まれました。

現場の声を無視した経営はリスクが大きい

現在でも「サービス残業」「見なし残業」などの古いシステムに依存し、コストを削減しようとする企業は少なくありません。

しかし、世間の労働基準法に対する意識が高まった今では、古い価値観にとらわれた企業ほど公的機関の監査対象となるリスクがあります。

もしも会社の経営に不当性があると判明すれば、ヤマト運輸の事例を参考にして巨額な未払残業代の支払いが要求されることもありえます。

また、SNSなどで情報が拡散する時代では、労働基準法を無視した企業は容赦なく「ブラック企業」の汚名を受け世間から批判を受けてしまいます。

従業員を守る意味でも、企業のイメージを損なわないためにも、労働基準法にのっとった労働規則を見直すことが企業の急務なのです。

たとえ現在の社則に問題がないと考えている経営者もリスク回避のためには一度、専門家に分析してもらうことが無難です。

弁護士などの鋭い視点から社則を読み込んでもらえば、より健全な企業経営に役立てるでしょう。

未払残業代請求への対応