平成26年に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」が改正され、法律事務所などにも経営者としてどのように対処すればよいか分からないというご相談が寄せられるようになりました。
労働力はしっかり確保したいけれど、正社員と比べてパートタイム労働者の待遇については、これまで対応が手薄だったと感じる経営者の方も多いようです。
今回の法改正により、企業として具体的にどのような対応が求められるのかをみていきましょう。
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」とは?
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」は、「パートタイム労働法」とも呼ばれています。
短時間労働者を確保し、雇用環境を改善することを目的とする法律で、平成5年に制定されたものです。
平成26年に行われた改正のポイントとしては、正社員と比べたときに差別的な扱いを禁ずるパートタイム労働者の範囲が拡大したこと、短時間労働者の待遇について原則を設け、短時間労働者に広く適用する必要があること、事業主がパートタイム労働者を雇うときには雇用管理の改善内容について説明しなくてはならないこと、事業主がパートタイム労働者の相談を受ける体制を整える必要があることなどがあげられます。
正社員と同一労働で人事面でも同じ仕組みを適用していれば、無期限の契約でなくても差別的な扱いが禁じられるので注意しましょう。
根拠に基づく説明が求められる
平成26年の改正により、パートタイム労働者と正社員の待遇に差異をつけるときには合理的な根拠が必要となり、待遇についてはパートタイム労働者に広く適用することが求められるようになりました。
そのため、客観的な視点に基づいて雇用管理を進める必要がありますし、パート労働者の間でも公平性を保たなくてはなりません。
経営者側からすると、パートタイム労働者からの相談や要望内容は個人により大きく異なるため、対応にとても時間や手間がかかると感じられるのではないでしょうか。
相談内容によっては未対応のままになっているものがあるかもしれません。
しかし、説明や対応を逃れていると後になって問題が起こる可能性があります。
企業としては待遇面ではしっかりした根拠に基づく説明が求められますし、相談窓口を明らかにしておく必要もあります。
法律に違反して勧告に従わない場合には、事業者名を公表される可能性があり、初期段階から計画的に雇用計画や情報公開・相談体制を整えることがポイントといえるでしょう。
専門家のサポートによる体制づくり
適切な労務管理システムを初期段階で整えることができれば、パートタイム労働者に対して根拠に基づく確実な対応ができるようになります。
経営者側にとっては、トラブルを未然に防ぐことができますし、その都度対応する負担感を大きく減らせるといえるでしょう。
その一方、労務管理システムを整えるためには、手間や時間もかかります。
御社だけで仕組みを整えることが難しい場合、早めに専門家のサポートを受けることをおすすめします。
これまでの労務管理を見直すことで、よりよい人材の確保にもつながるのではないでしょうか。
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