企業を運営していくためには、把握しておかなければならない法律がいろいろあります。
女性活躍推進法もその一つです。
この法律によってどのような義務が課されているのか、企業としてどうした対応が求められているのかをみていきましょう。
女性活躍推進法とはどのような法律なのか?
女性のリーダーを増やすことを目的として、2015年8月28日「女性活躍推進法」(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が成立しました。
この法律は国、地方公共団体の責務を明記するとともに、企業にも義務を課しています。
つまり、従業員が300名を超える企業は、企業内の女性比率や平均継続勤務年数の男女差、管理職に占める女性比率などの状況を把握し、発見された課題を解決するため事業主行動計画を策定すること等が義務付けられました。
この計画には企業ごとに数値目標を盛り込むことが求められています。
数値目標は具体的な数値でも割合でもよいとされていますが、2016年度から2025年の計算期間で達成可能なものでなければならないでしょう。
なお、従業員が300名以下の企業には努力目標として上記課題が課されています。
男女雇用機会均等法から30年目の節目……
女性活躍推進法の施行された2016年は、雇用機会均等法の施行からちょうど30年にあたる節目の年でした。
均等法が男女差別をなくすことを目標としたものであるのに対して、女性活躍推進法はより積極的に女性の管理者を増やすための行動を促すためのものです。
30年前と比べて社会は女性にとってより働きやすくなったといえるでしょうが、いまだに30代でいったん離職する女性が多く、女性の管理職の割合は約1割にしかすぎません。
これはアメリカやフィリピンの4分の1で、諸外国と比べても圧倒的に低い数値です(独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査結果)。
経済活動を好転させるためには女性の労働力が必要であるため、政府は女性活躍推進法を制定したのです。
企業の陥りがちな対応と正しい対応
女性活躍推進法について学んだ事業主の方の中には、女性だけを優遇した計画を実行すればよいのかと思う方がいるのかもしれません。
しかし、男女雇用機会均等法が存在するため、男女双方を対象とする必要があります。
たとえば管理職育成研修を実施するならば、女性のみでなく、男性もターゲットとする必要があります。
また、この法律では職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立の実現が求められているため、女性を管理職とする代わりに労働時間を大幅に増やすことも認められないでしょう。
女性の管理職が低い要因として、女性が育児に追われている現況があるため、労働時間を増やすとかえって管理職希望の人が少なくなってしまいかねません。
女性活躍推進法のもとでは女性にとって働きやすい労働環境を提供することが求められているといえるでしょう。
行動計画の策定・届出を行った企業のうち特に優良であると認められた企業は、厚生労働大臣からえるぼし認定を得ることができ、企業のイメージアップにつながります。
えるぼし認定マークにある「L」にはLady(女性)、Laudable(称賛)、Labour(労働)の3つの意味が込められており、このマークから「えるぼし認定」と呼ばれています。
女性活躍推進法、男女雇用機会均等法のバランスをとった従業員規則の制定にお悩みならば、弁護士に知恵を借りる手もあります。
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